mediaブレインテック通信

第1回ユーザー事例研究会@大倉精神文化研究所附属図書館

2019.02.25
  • イベントレポート

公益財団法人 大倉精神文化研究所附属図書館は、横浜市港北区、東急東横線の大倉山駅から徒歩7分ほどのところにあります。1932年、実業家の大倉邦彦氏によって設立されました。目的は東洋、西洋の文化の良さを学び、人材育成に活用すること。附属図書館は同時にオープンした精神文化の専門図書館です。開館から80年余り、今も一般公開され、多くの人に東西の精神文化の貴重な知識を提供しています。情報館の導入からおよそ5年。貴重資料コレクションや雑誌データなど、徐々にOPAC公開を進め、現在は沿革史資料の公開に取り組まれています。

今回、初めての開催となる「ユーザー事例研究会」を、この大倉精神文化研究所附属図書館を会場として開催させていただきました。

ユーザー事例研究会は、全国各地の弊社製品・サービスをご利用の図書館を会場として開催するイベントで、図書館を見学したり、参加者同士での意見交換を行ったりするものです。

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開催概要

イベント名:第1回ユーザー事例研究会

会場:公益財団法人 大倉精神文化研究所 附属図書館(情報館導入:2013年)

テーマ:変化し続ける、歴史ある図書館~最近の取り組みから、未整理資料のOPAC公開、自分たちで続けられる資料保存・修復などについて

日時:2019年1月24日(木) 13:30 ~ 16:30

会場:公益財団法人大倉精神文化研究所 附属図書館(神奈川県横浜市港北区大倉山2-10-1)

参加館:5館5名

大倉山記念館の見学

図書館内の見学の前に、大倉精神文化研究所の所長で図書館運営部長でもある平井誠二様に、横浜市の指定有形文化財に指定されている建物(大倉山記念館)全体のご案内をしていただきました。

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エントランスホールで上を見上げると、吹き抜けの先にある高い天井に幻想的な光に包まれた彫刻がいくつも見えます。今回は普段は上ることのできない、この塔の上までご案内いただきました。外から見ると、建物中央上部の柱が並んでいる部分です。

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人が1人通るのがやっとの狭い階段を上っていった先には、素晴らしい景色が広がっていました。

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当日は良く晴れてとても見晴らしがよく、遠くに、スカイツリーが見えていました。むかしは、ここから国会議事堂も見えたのだそうです。また、塔の外壁に沿った通路から内側に空いた丸い窓を除くと、エントランスホールから見上げた彫刻が目の前に。

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現在、館内のホールや集会室は、横浜市の公共施設として市民が利用できるようになっていますが、館内の壁や床、家具などにも建設当時のままの姿が多く残っています。

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<参考>
大倉山記念館 http://o-kurayama.com/
公益財団法人 大倉精神文化研究所 https://www.okuraken.or.jp/

図書館内の見学

続いて、図書館の見学へ。

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図書館には、閲覧室が2つと利用者が入ることのできる「開架書庫」とスタッフのみが入れる「閉架書庫」があります。まず、図書館カウンターのある第一閲覧室で司書長の佐賀原様から図書館の概要についてご説明を受けました。

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図書館では昨年、創立者である大倉邦彦氏の生地、佐賀県神埼市の市立図書館と姉妹図書館になったのだそうです。専門図書館と公共図書館が姉妹提携をするのはおそらく全国で初ではないかとのこと。館内には、神埼市に関する展示コーナーも設けられていました。

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また、少し意外だったのは、閲覧室に紙芝居コーナーが設けられていたこと。大倉邦彦氏や図書館のある港北区の歴史に関わるオリジナルの紙芝居のほか、たくさんの紙芝居がありました。

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こちらの図書館は専門図書館としては珍しく、資料の館外貸出も行っているので、一般図書を中心に近隣の住民の利用も多いそうです。

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続いて、いよいよ書庫へ。こちらの書庫は、建てられた当時のままの5層架構鋼鉄製書架で、内部に冷暖房などの設備はありません。図書館の皆さんから、「書庫内は、夏は暑く、冬は本当に寒いので」と、参加者のために携帯用カイロをご用意いただくという心遣い。

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貴重書を含む多くの和洋古書が並ぶ書庫内には、温湿度管理のための設備などが特別にあるわけではないそうですが、カビ臭さなどは全然ありませんでした。5層にわたってぎっしりと蔵書が詰まった書架は圧巻です。

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書庫内の本には傷みのある本も見受けられます。図書館では、専門家の手も借りながら、資料の保存や修復にも以前から取り組まれています。また、過去に作った保存ケース自体が古くなってしまい、ボランティアの手などを借りて新しいものに替えていく作業なども地道に続けているそうです。

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開架書庫内には、今では貴重な古い図書館用品や什器が展示されているコーナーもあり、書庫自体がちょっとしたミュージアムのようでした。

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<関連資料>

NewsLetter 2014年8月号(Vol.23,No.4,通巻132号)
こんにちはブレインテックです 第75回 大倉精神文化研究所附属図書館
https://braintech.co.jp/support/support_info/newsletter/pdf/201408-132.pdf

株式会社ブレインテック第30回ユーザー研究会記録集
事例発表 平井誠二様(大倉精神文化研究所)
https://braintech.co.jp/support/support_info/download/945.html

意見交換

図書館の見学を終えた後、休憩をはさんで第二閲覧室を会場に意見交換会を行いました。

5名の参加者の方と、平井様、司書の皆さん、さらに同行した弊社スタッフも一緒に机を囲んで座り、まずは自己紹介と見学の感想や補足説明などから始まりました。見学の感想や質疑を交わしました。

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大倉精神文化研究所附属図書館では、情報館を導入した後、雑誌や貴重コレクションについても順次OPAC公開を進められてきました。最初は図書や雑誌の管理のために導入した情報館ですが、利用していく中で、図書以外の資料も管理でき、分類は必ずしも図書と同じ分類を使わなくてよい、といったことがわかってきたため、最近では研究所の沿革史資料も情報館に登録して、OPACで公開する作業に取り組んでいらっしゃいます。資料の整理と公開を進めていくと、それによって利用者の反応が変わり、図書館自体の認知度もあがり、さらにそれを受けてスタッフの仕事も変わっていくといった、多様で連続的な効果が生まれてくるのだそうです。

参加者からの「古い資料を整理する際に図書館スタッフだけでは手に負えない場合はどうしているのか」という質問に対しては「所内の研究員や客員研究員の協力を得て調べるが、それでもわからないものは後回しにしている」というお話があり、スタッフの皆さんのご苦労もうかがわれました。

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資料の保存・修復に関しては、図書館の利用者が増えたことで、複写のために古い資料を書架から出してくる機会も増え、想定以上に状態の悪い資料があることも分かってきたそうです。最近では、専門部門を持つ大学図書館に見学に行ったり専門業者に相談したりして、保存・修復に積極的に取り組まれています。何を優先して修復するのか、どのように、どこまで修復するのかといったことには正解がなく「自分たちにできる範囲のことを、自分たちで考えて一つ一つやっていくしかない」というお話が印象に残りました。

他にも、複写依頼があるたびにその資料をデジタル化し、次からはデジタル化した資料で複写依頼に対応することで原本の使用頻度を下げるといった取り組みもされているそうです。こうした話題から、他館でのデジタル化の現状などについても話が及びました。

最後に、図書館の広報についても話題に。こちらでは、大倉山記念館の市民利用施設が目的で来館した方たちを、いかに図書館に誘導するかが一つの課題です。以前は図書館の入り口に図書館という表示もなく、記念館に長年通っている人でも図書館があることを知らなかったというくらい、存在感が控えめだったそうですが、最近は図書館の入り口に図書館の看板を置いたり、展示を行ったりして来館者を誘導するように工夫しているのだそうです。

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このほか、資料の保管場所が足りないという現状や、所蔵資料の廃棄(除籍)に関することなど、様々なテーマが話題にのぼり、1時間以上あった意見交換会は、あっという間に終了予定時間を迎えました。

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最後は全員で名刺交換をしたり、参加者の方が持参した自館のイベントのチラシやパンフレットなどを交換したりして、解散となりました。

様々な話題が出た中で、館種に関わらず共通するものと、館種によって全く事情の異なるものがあったことは、私たちブレインテックとしても大変興味深いものでした。また、たった今見学してきた物事について話をしているため、とてもリアルで説得力のある話として記憶に残るものとなりました。

今後のユーザー事例研究会について

毎年1回開催しているユーザー研究会とは別に、弊社システム・サービスをご利用の皆様向けに開催する「ユーザー事例研究会」は、参加者の皆さんが「情報をもらう」だけでなく、開催会場となる図書館の方々と「情報を交換する」ことで図書館システムをより良く使っていただけるようになるということを目指しています。図書館を会場として実施するため、参加人数には限りがありますが、今後定期的に開催していく予定です。

次回の開催については、決まり次第Webサイト、News Letter等でお知らせいたします。ぜひ積極的にご参加ください。また、「うちの図書館で開催を」というお申し出はいつでも大歓迎です。

(広報担当 関)

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